
国産牛と和牛って何が違うの?
スーパーで見かけても、違いがよく分からないよ・・・。



そんな悩みはこの記事で全て解決できます!
牛の各品種についても詳しく解説しているので良かったら読んでみてください。
この記事では、「国産牛」と「和牛」の違いについて、簡単に分かりやすく解説していきます。結論から言うと、国産牛と和牛の違いはこのようになります。
国産牛とは肉専用種(和牛)、乳用種、交雑種、外国種などのうち最長肥育地が日本のものを指す。これらをまとめて「肉用牛」とよぶ。そのうち和牛と呼べるのは黒毛和種・褐毛和種・日本短角種・無角和種の4品種のみ。
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この記事では、全国食肉検定委員会主催の「お肉検定講習会1級テキスト」に記載の内容を多く参考にしています。引用については公益財団法人全国食肉学校様より許可を頂いております。ご協力頂きまして誠にありがとうございました。
それでは早速みていきましょう。
国産牛の各カテゴリーについて


上の図を見てもらえれば分かるように、国産牛という広いカテゴリーの中に和牛・乳用種・交雑種・外国種などの肉用牛が位置しています。ここではその中の乳用種・交雑種・外国種について詳しく解説していきます。
乳用種とは?去勢牛と雌牛で目的が変わってくる


乳用種とは主に「ホルスタイン種」、「ジャージー種」、「ブラウンスイス種」の3品種のことを指します。そのうち、肉用牛と呼べるものは、雄牛を去勢し肥育を重ねたものになります。品種ごとの特徴については後ほど詳しく解説します。



去勢とは雄の生殖腺を除去して生殖能力を無くすことなんだ!
これ、実は肉質にも凄く関係しているんだよ。
去勢をしていない牛は「ブル」といって、雄牛特有の臭みがあるんだよね・・。
あれは苦手だなあ・・・(小声)



それじゃあ、雌の乳用種はどうなるの??



雌の乳用種は「乳用牛」というカテゴリーになるよ!
簡単にいうと牛乳を搾るための牛だね!
子どもを産み終わって牛乳が出なくなった牛は「乳用種経産牛」として、加工用や安価な国産牛として出荷されるんだよ。
去勢の乳用種は「肉用牛」、雌の乳用種は牛乳を搾るための「乳用牛」として利用される。
交雑種とは?他品種とのかけ合わせでできた牛
次に交雑種について解説します。交雑種とは他の品種とのかけ合わせでできた牛のことです。日本では一般的に、乳用種のお母さん牛と黒毛和種のお父さん牛をかけ合わせたものを交雑種と呼びます。



業者間ではほとんど「F1」と呼んで商売をしています。



「F1」ってなんの略?



雑種第一代(filial 1 hybrid)の略だよ!
簡単に言うと一世代目の子どものことを指します。
例えば、交雑種の子どもは雑種第二代、その子どもは雑種第三代と続いていくよ。
しかし私たちの業界では、雑種第一第以降は「肉専用種」として表記することになっています。
外国種とは?日本国外で確立された品種


一方、外国種とは日本以外の外国で確立された種になります。世界三大肉用種と呼ばれるものは次の3種です。
- アバディーン・アンガス:英国スコットランドで作られた品種
- ショートホーン:イギリス原産
- ヘレフォード:英国イングランド地方が原産地
アバディーン・アンガスは日本でいう黒毛和種の位置づけに近く、体毛が黒色であることが特徴です。また、肉質も良く脂肪交雑も他の外国種に比べて入りやすいという特徴があります。



ただし、いくらサシが入りやすいといっても純粋な国産の牛と比べると肉質は劣ります。
ここまでのまとめ
和牛と呼べる4品種について


日本で和牛と呼べるものは、黒毛和種・褐毛和種・日本短角種・無角和種の4種のみです。これらがどのような牛か、順番に解説していきます。
黒毛和種とは?和牛の9割以上を占める品種


黒毛和種とは、全国の和牛の飼育頭数の約98%を占めている品種です((独)家畜改良センター平成31年4月末時点)。有名なものでは、松坂牛・神戸ビーフ、但馬牛、前沢牛なども黒毛和種になります。
日本の銘柄牛のほとんどは黒毛和種が占めています。銘柄牛については下の記事で詳しく解説しているので良かったら読んでみてください。
≫ 銘柄牛とそれ以外の牛肉の違いについて(仮)(執筆中)



私が住んでいる九州で有名な銘柄牛を参考として載せておきますね。
みなさんが知っている銘柄牛はいくつありますか?
ふるさと納税で使われることも多いので、目にしたことがある方も多いかもしれません。
佐賀牛、伊万里牛、博多和牛、糸島牛、宮崎牛、鹿児島黒牛、和王、長崎和牛、壱岐牛、豊後牛・・・etc
特に佐賀牛は、ふるさと納税ランキングでも毎回上位にランクインしているので全国的な知名度はかなり高いでしょう。きめ細かく美しいサシが特徴で、ふるさと納税だけではなく、地元九州では小売り店からの人気も非常に高い銘柄です。



価格面でも佐賀牛は他の銘柄牛よりも割高で市場取引されています。
それだけ需要が高いということの証拠だね!
褐毛和種とは?赤褐色の毛色が特徴


褐毛和種とは、熊本県と高知県の赤牛を基礎として改良を加えた品種になります。飼育頭数としては黒毛和種の次に多く、主な産地は熊本県と高知県になります。
ほとんどの褐毛和種が地産地消として熊本県と高知県で消費されるため、他県で広く流通するまでには至っていません。また飼育頭数も限られているため、産地以外の一般消費者が目にすることは少ないでしょう。
肉質は黒毛和種に近いですが、サシの入り方は若干弱いため赤身嗜好の方に好まれています。



褐毛和種は、脂身が苦手な方や脂身が重くなってきた方に最適!
私が最近食べた東北の「漢方和牛」という褐毛和種も、非常にあっさりとした脂で、かつ旨味もあったのでとても美味しかったです。



あっさりとした脂身の中にしっかりと旨味も感じられて、女性にも凄くオススメだと思います!
お肉のプロが選ぶ年代別のオススメの品種や部位については、こちらの記事で詳しく解説しています。
≫ 柔らかいお肉が全て美味しいわけではない!年代別オススメ部位も紹介! (執筆中)
日本短角種とは?東北が主産地の希少な牛


日本短角種とは、東北地方北部原産の南部牛に米国から輸入されたショートホーン種を交配して改良したものです。岩手・青森・秋田で主に消費されています。肉質は黒毛和種や褐毛和種にはおよばず、赤身主体の品種となっています。
粗飼料の利用効率が良く、東北の気候や風土に適合しているため生産者からは好まれている品種でもあります。
無角和種とは?中国地方でのみ飼われている少数品種


無角和種とは、山口県阿武(あぶ)郡で在来和牛をアバディーン・アンガス種によって改良してできた品種のことです。主産地は山口県で非常に少数な品種となっています。肉質は日本短角種と同じく、黒毛和種や褐毛和種には及びません。



私も福岡で10年以上この仕事をしていますが、日本短角種と無角和種は数えるくらいしか見たことがありません。
それだけ流通量が極めて少ない品種ということですね。
各品種ごとの特徴について
【図】
それでは次に、各品種の特徴について詳しく見ていきましょう。
乳用種の特徴


日本で飼育されている乳用種のうち、99%以上をホルスタイン種が占めます。飼育頭数は約150万頭で、毛色は白と黒のまだら模様が特徴です。
肉用牛としての去勢の乳用種は、安価な国産牛として広く流通しています。近年は酪農家の減少に伴い、飼育頭数が減少傾向にあるため、相場が上昇傾向にあります。



一般的に「国産牛」として流通しているのは、去勢の乳用種と交雑種になります。
ただし、交雑種は差別化するためにあえて「国産牛」とうたわず、「交雑種」として売り出している企業も多いです。
また、乳用種の飼育頭数は北海道が圧倒的にトップとなります。時点に栃木、愛知と続きます。北海道は納得ですが、栃木や愛知が上位にランクインしているのは個人的に意外な結果だと感じています(データは令和2年時点のもの)。





酪農って言えば北海道っていうイメージがやっぱり強いよね!
交雑種の特徴
交雑種の特徴として、ほどよい価格帯とほどよいサシの入り具合が特徴です。飼育方法にもよりますが、肉質はお父さん牛となる黒毛和種の血統に大きく左右されます。等級はB2~B3が一般的であり、4~5等級の発生は非常に稀です。
また、交雑種は骨の太い乳用種のお母さん牛の血を引いているため、歩留まりがあまり良くありません。その性質上、A等級の発生はほとんどありません。
国産牛の等級に関しては下の記事の第2章で詳しく解説しています。
≫【全9章】現役のプロが解説!国産牛肉についての総まとめ。肉リテラシー向上セミナー
外国種の特徴
主な外国種である「アバディーン・アンガス種」「ショートホーン種」「ヘレフォード種」の特徴について順番に解説していきます。
アバディーン・アンガス種


毛色は黒色で角はなく、産肉量・肉質共に良いのが特徴です。英国スコットランドで作られた品種であり、ヨーロッパや豪州で多く飼育されています。
日本国内で流通しているアンガス種の多くは、米国産や豪州産が占めています。肉質も良好なため、日本人好みの味と風味が特徴です。
脂肪交雑が入りづらいというデメリットがありますが、逆をいうと赤身嗜好の方には好まれる肉質であるとも言えます。
ショートホーン種
毛色は白色や褐色で角があることが特徴です。イギリス原産の牛であり、アバディーン・アンガス種やヘレフォード種と並び世界三大肉用種に分類されます。
肉質はアンガス種やヘレフォード種よりも劣るとされています。
ヘレフォード種


毛色は褐色で顔から胸、腹にかけては白色なのが特徴的な牛です。英国イングランド地方が原産地とされ、米国や豪州でも多く飼育されています。
非常にタフな牛でもあり、厚さ・寒さ・乾燥等の過酷な環境にも適応することができます。肉質はアバディーン・アンガス種よりも劣るとされています。
黒毛和種の特徴


明治時代から品種改良が重ねられており、日本の和牛の大半を占める品種です。毛色は黒色の中に若干褐色を帯びていて、見た目は無角和種と似ていますが無角和種の方が黒味が強いのが特徴です。
肉質は、和牛と呼ばれる4品種の中で最も優れています。
全国各地で広く飼育されており、各土地の特徴に合わせた銘柄牛も多く見られます。鹿児島県や宮崎県が産地では有名ですね(データは令和2年時点のものです)。





九州が畜産大国と呼ばれているのも、これを見ると納得だね!
褐毛和種の特徴


毛色は黄褐色から赤褐色なのが特徴です。熊本県で放牧に適する牛として改良された「肥後牛」と、高知県で改良された「高知系」の2つに分けられます。性格は穏やかで暑さにも強い品種です。
肉質は黒毛和種よりも劣りますが、赤身が非常に美味しく健康的なイメージがあるのも特徴の一つです。
日本短角種の特徴


毛色は濃い赤褐色なのが特徴です。見た目は褐毛和種に近いですがこちらの方がより濃い毛色をしています。
南部牛とアメリカから輸入されたショートホーン種とデイリー・ショートホーン種を交配・改良した品種です。東北地方が原産地であり、現在は岩手県を中心に飼育されています。
他県では青森県・秋田県・北海道で飼育されており、全体で約数千頭しかいない希少な品種ともいえます。



九州ではまず見ることはできないね・・。
無角和種の特徴


毛色は黒色なのが特徴。見た目は黒毛和種そっくりですが、こちらの方がより濃い黒色をしています。
山口県で約200頭しか飼育されていない超希少品種です。他県に出回ることはほぼありません。



私も一度だけ食べたことがあります。
ですので個人的な感覚になりますが・・。
肉色は他の和牛に比べて濃く、味はあっさりとしたイメージでした。
良くも悪くもみなさんがイメージする和牛とは少し違うでしょう。
まとめ:乳用種と和牛4品種の特徴
乳用種と和牛4品種の特徴を表にまとめました。



国産牛と和牛は次のように分けることができるんでしたね!
国産牛とは肉専用種(和牛)、乳用種、交雑種、外国種などのうち最長肥育地が日本のものを指す。これらをまとめて「肉用牛」とよぶ。そのうち和牛と呼べるのは黒毛和種・褐毛和種・日本短角種・無角和種の4品種のみ。



これでもう、国産牛と和牛の違いで悩むことはないね!



今日から、スーパーのお肉売り場を見るのが楽しくなるはず(笑)
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。当ブログでは現役のお肉の営業マンがお肉のことについて徹底的に解説しています。
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今日も最高のお肉ライフをお過ごしください!
本日もありがとうございました!!!